遭遇と独占欲

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しかし彼女の言い分はまだ続いた。 「それにもてるだろうから、そこまで不自由してないかと」 どうしてそう枯れたオバチャン発想なのか。 ここに男の気をひく能力云々は関係ない。 少なくとも生物学上、自分が女に分類されることは自覚を持ってもらいたい。 「あなたのその油断を心配してるんです。前科があるでしょう。一肌でなく服を脱いだ前科が」 ああまた嫌味が。 先ほどせっかく「脱ぐ」ワードに食いつかず辛抱したのに、どうして僕の性格はこうも執念深いのだろう。 毒を吐かない穏やかな東条の脳内はいったいどうなっているのか、対極にいる僕には彼が宇宙人に思える。 「……すみません」 僕を上目で窺う彼女の恨めしげな顔つきから、頭の中で僕の悪口大会を繰り広げていることは容易に想像がつく。
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