遭遇と独占欲

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「ごめんね」 予想よりも短時間で香子が戻ってきた。 職業柄か、香子は化粧直しが丁寧らしく、しばらく待たされることが多い。 それが今日はかなり早く、僕は先ほどの熱を冷ましただけで、まだ言い訳を考えていなかった。 「何か追加する?」 切り出されるきっかけから逃れるように香子のドリンクをオーダーしたが、やはり香子はごまかされなかった。 「さっきの、何だったの?」 艶やかな髪をかきあげ軽く微笑む柔らかな仕草とは裏腹に、質問は鋭い。 「さっきのとは?」 「合コンの邪魔をしてたじゃない。ヤキモチ妬いちゃったの?」 メークをリタッチした肌は内側から艶があり、悪戯っぽい表情には妖艶さが漂う。 追及を受けながらも、昔よりも綺麗かもしれないと感心する。 ただ、以前と違い、今の僕はそんな完璧さには心惹かれなかった。
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