遭遇と独占欲

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「先週はこちらこそ忘年会にまでお招き頂いて楽しかったわ」 「あの日は遅くまで悪かったよ」 疲れた喉にビールを流し込んでいた僕は、一瞬視界の端を過った何かに反応して通路に目をやった。 僕たちの席は個室で、高い衝立で通路から隔てられている。 その通路のずっと先を、今来たばかりらしい二人の女性客が店員に誘導されていた。 料理を運ぶウェイター、 客席をまわるウェイトレス、 トイレへ立つ女性客。 通路は幾人もの人間が絶えず往来している。 年末の混み合う店内で、何も珍しい光景ではないのに。 僕には変なセンサーでもついてしまったのだろうか? 二人連れの後ろを行く、僕の目にはひときわ目立つ平凡な横顔は、江藤奈都だった。
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