1928人が本棚に入れています
本棚に追加
「先週はこちらこそ忘年会にまでお招き頂いて楽しかったわ」
「あの日は遅くまで悪かったよ」
疲れた喉にビールを流し込んでいた僕は、一瞬視界の端を過った何かに反応して通路に目をやった。
僕たちの席は個室で、高い衝立で通路から隔てられている。
その通路のずっと先を、今来たばかりらしい二人の女性客が店員に誘導されていた。
料理を運ぶウェイター、
客席をまわるウェイトレス、
トイレへ立つ女性客。
通路は幾人もの人間が絶えず往来している。
年末の混み合う店内で、何も珍しい光景ではないのに。
僕には変なセンサーでもついてしまったのだろうか?
二人連れの後ろを行く、僕の目にはひときわ目立つ平凡な横顔は、江藤奈都だった。
最初のコメントを投稿しよう!