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秤の上で水平に
調整室で、お嬢様はいつものコンソールに向き合っていた。そこへ、庭師が階段を降りてきて、電子ロックの掛かったドアを開いた。
「やっと来たわね」
「坊ちゃんと話が弾んじゃってね。それで、麗しのお嬢様(my lady)。しがない庭師ちゃんに何の御用かな?」
「あら、分かっている癖に。庭師はいつだって意地悪だわ」
帽子を取ってお辞儀する庭師に、むっと唇を尖らせてお嬢様は眉を寄せた。庭師は両手を軽く振って、敵意がないことを示した。お嬢様は躊躇わず、口を開く。
「あなた、何か隠しているでしょう」
「僕はいつだって誠実ですよ」
「そう。私、誠実なあなたにとってもとっても大事なことを言わなくちゃいけないのよ」
お嬢様はお気に入りの兎のポーチの底を漁り、小さな鉄の粒を取り出した。精密に作られた小型の盗聴器だった。お嬢様は親指と人差し指で挟んで、まだ機能しているそれを突き付ける。
「これ、なあに?」
「やっだぁ、ついに見つかったかぁ……」
「家や近所のあっちこっちに仕掛けているでしょう」
突き付けられた真実に目を剥く庭師に向け、続けてお嬢様はポーチをひっくり返した。ざらざらと鉄の粒はいくつも出てきて、床に散らばった。お嬢様はポーチを握りしめたまま、腰に手を当てた。
師は鉄の粒をかき集め、慌てふためいた。
「ああっ、僕の地獄耳! げっ、全部ある! 違うんですー、僕は館の平和な毎日を見守ってるだけなんですー」
「お風呂場にもあったんだから。悪い趣味だわ。いけない子!」
ほんの少し顔を赤らめたお嬢様に、庭師は口を真一文字にして頭の兎耳をぺたんと伏せた。立ち上がり、両手の人差し指を突き合わせて、彼女は引きつり笑いをしながら視線をさまよわせる。
お嬢様はため息をついて、コンソールに頬杖をついた。
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