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母がおもてなしセットを運んでくる。今日は煮物漬物は一切なし。お茶菓子入れに大量に放り込まれたクッキーやチョコレート、揚げ煎餅にオレンジジュースが添えられる。
「ゆっくりしてってねぇ」
母が立ち去ろうとする。
「えっ、母ちゃん行っちゃうのか?」
「二人でゆっくり話しでもしてなぁ」
母はにこやかに手を振りながら居間へと戻っていく。ぶれない女だ。おそらく今の時間は父とお菓子片手にプロ野球のデイゲーム観戦中である。
気まずい空気が流れる。
このままではまずい。何か話題を・・・。必死で私が頭を働かせていると、
「今日さぁ、最初こけしがしゃべったからびっくりしたよ」
海斗くんの方が先に口を開いた。
「可愛いだろ。お花ちゃんていう看板娘ロボットなんだよ。」
すると、海斗くんは瞳を輝かせる。
「ロボット?!すっげえ!!このお花ちゃんって他に何かできるの?」
興味津々といった様子で嬉しそうに尋ねてくる。
「ふふっ・・・あの言葉しか言わないよ。」
「何それ全然すごくねーじゃん(笑)」
やっと会話の中で笑いが生まれた。間違いなく、今日1番の輝くような笑顔である。会えなかった長い年月にできてしまった距離をお花ちゃんが縮めてくれたようだ。
「なんかこのお店ってさぁ、綺麗な石がいっぱい並んでておもしろいね~」
「人口じゃない、自然が創り出したものだからなぁ・・・本当すげえよな。」
私は棚から針入水晶の単結晶を取り、布で優しくクリーニングする。水晶の中で自然に形成された金色の美しい針。優しく、独特の輝きを放っている。
「こーゆー石ってどこで買ってくんの?」
「んーー俺は海外から直輸入してるけど」
「うっそ!業者とか通して買うんじゃないの?!」
「まぁ、ネット通してだけど・・Skypeとかメールとかで直接交渉しながら買い付けてるよ」
「まじかよ!やっぱアフリカとか、あの辺の国だよね」
もう海斗くんは異国との直接交渉という壮大なキーワードに興奮を隠せない。
「アフリカもだけど、ブラジルとか中国、ロシア、ネパールとか・・・色々だな」
「すっげえなぁ、お兄ちゃんどんだけ外国語できんだよ」
「算数と理科は嫌いだったけど、外国語はなんか得意だったんだよなぁ」
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