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「紅水晶ですね!ではこちらでペンダントトップの素材となる石を選びましょう。」
涙のような形、ハート形、卵型、カットが施されて宝石のような光を放つものまで店には
実に多様なカットを施したペンダントトップが並ぶ。
「ふあああ・・・どれも可愛いっっ」
数多くの紅水晶のペンダントトップを前に興奮した様子の彼女。
「今のご自分のお気持ちに近いものや何か頭に浮かんだイメージに近いものをお選びになと長くパートナーとして石と寄り添えると思いますよ」
彼女はすっと卵型に成形された紅水晶に手を伸ばす。
「これ、この卵みたいな形のにします!」
ーー 石が選ばれた ーー
話し合いの末、石に金属アレルギーの起こりにくい素材であるステンレス製金具で天使の羽の装飾を施し、完成次第お渡しということで話がまとまった。
「完成したら宅配便でお送りすることも、直接取りに来ていただくこともできますがいかがいたしますか?」
「・・1週間後・・・迎えに来ます。」
そう言って彼女は卵型の紅水晶を見つめ、まるで愛しい我が子をあやすかのように微笑んだ。
ーーーーーー
今日は小雨が降っている。若干の肌寒さもあり、私は店の椅子に掛けていたカーディガンをさっと羽織る。
「今日は畑出らんないなぁ」
母が店の方に出てきて外の様子を伺う。
今日は紅谷様が完成したペンダントを受け取りに来る日だ。
「(雨で足元も悪い状況だ。妊婦さんがこんな日に外出して大丈夫なのか?もし転んだりしたら・・・)」
そんなことを気にしてしまえば妊婦達は外出もろくにできないであろう。しかし、私としては、危険だらけの雨の日に妊婦が外出することが非常に恐ろしいことのように感じた。このように感じてしまうのも決して妊婦になり得ない「男」という生き物ゆえだろうか。
「石屋さぁん、こんにちは!」
聞き覚えのある声。店の入り口にはあの可愛らしい女性、「紅谷様」が手を振る姿があった。
隣には、彼女を気遣うように寄り添う一人の若い青年が立っていた。
「こんにちは」
爽やかな笑顔だ。
「あ~らぁ~!この前のお客さんねぇこんにちはぁ!」
母がささっと家へと入っていく。「おもてなし」の準備である。
「では、こちらへどうぞ」
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