17 一度でいいから(※)

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「……だ」 「え……?」  絞り出すような弱々しい声は聞き取れず、思わず聞き返すと、松本は再び奏多を抱きしめ、今度は耳元ではっきり囁かれた。 「奏多……君が……好きだ」  奏多は愕然とした。  彼は優しすぎるにも、ほどがないだろうかと。  奏多は男だ。弟として大事にしてくれた彼の気持ちに嘘はないと思うが、同性からの恋情を都合よく受け取れるはずがない。  彼の告白は、奏多をどうにか傷つけずに丸め込む、偽善者の虚言としか思えなかった。 「ふ、ふざけんなっ!」  松本が抱きしめる腕に力を込めようとした瞬間、奏多は彼を思い切り突き飛ばした。
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