1796人が本棚に入れています
本棚に追加
/1351ページ
「……だ」
「え……?」
絞り出すような弱々しい声は聞き取れず、思わず聞き返すと、松本は再び奏多を抱きしめ、今度は耳元ではっきり囁かれた。
「奏多……君が……好きだ」
奏多は愕然とした。
彼は優しすぎるにも、ほどがないだろうかと。
奏多は男だ。弟として大事にしてくれた彼の気持ちに嘘はないと思うが、同性からの恋情を都合よく受け取れるはずがない。
彼の告白は、奏多をどうにか傷つけずに丸め込む、偽善者の虚言としか思えなかった。
「ふ、ふざけんなっ!」
松本が抱きしめる腕に力を込めようとした瞬間、奏多は彼を思い切り突き飛ばした。
最初のコメントを投稿しよう!