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女性陣二人はいそいそと立ち上がり、キッチンに向かった。
残された父親と松本は、男同士でビールを飲みながらの世間話が始まった。
奏多はもはや空気のような存在で、このまま消えても全く問題なさそうな雰囲気だ。
トイレに行くふりを装って、気配を消しつつ部屋を出ようとした時、「奏多、ちょっと来い」と父親に呼び止められた。
内心舌打ちしして、父親の隣に座った。
「尚憲くんは理系大学の出身だそうだぞ。お前、理系の大学希望してたじゃないか。いろいろ相談に乗ってもらったらどうだ?」
「お義父さん、僕は奏多くんより一回り年が上ですし、アドバイス出来るほどの新しい情報は持っていませんよ」
父親の的外れな提案に、松本は若干困惑しているようだ。
しかし助け舟を出す義理もないかと、奏多は素知らぬ顔で二人の会話を聞き流していた。
「いやあ、どうにも私が理系の人間じゃあないんで、詳細がよく分からんのだよ。梨花だけじゃなくて、義兄としてこの子の面倒も見てもらえると非常に助かるんだがどうかね?」
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