彼女のための選択

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「とにかく話を戻します。訴訟に向けて確認しなければならないことがたくさんありますので」 訴訟という言葉に彼女は青ざめて勢いを失い、涙声になった。 「訴訟だけは……」 「あなたには被害者意識があるようですが、被害者はあなたではなく、会社と相手側の妻です。そのことをまず理解して下さい」 「はい……」 「そして宮田健吾はあなた一人が責めを負うと分かっていたからあなたを利用した。彼の口約束が嘘であることを、あなたも本当は知っていたでしょう」 「はい……」 堀内嬢はうつむいて啜り泣いた。 「次の条件を守るなら、訴訟は回避します」 実は訴訟を起こす気など、当初からまったくない。 社員管理のずさんさを世間に晒すだけで、企業に何の利益もないからだ。
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