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もう一つ、僕にとって重要な、そして口外できない悩ましい理由があった。
訴訟などに持ち込み事の扱いを大きくすると、東条を救済できなくなることだ。
救済というより“揉み消し”というやつだが、そのために僕はこうして“密室の二人面談”に持ち込んだ。
そうだ。
なぜ東条の不始末のせいで、僕があのしつこい人事部課長にニヤニヤ笑われなければならないのか。
『マンツーマンの方が油断もするし吐きやすいでしょう。僕が聞き取りします』
『堀内は美人ですからねぇ』
『……』
僕は囚人に手を出す破廉恥刑務官ではないし、そもそもこんな女は趣味ではない。
噛みつきたいのにできない、再び込み上げたあの時のムカムカをまた飲み込む。
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