彼女のための選択

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関わった男の中で確認できたのは四人。 最初の男、海外事業部の社員は現在海外に赴任中だ。 彼本人の過失というより堀内嬢が悪質に情報を抜いたようなので、わざわざ日本に呼び戻して処分するまでの落ち度ではない。 調書には堀内嬢から聞き取った状況の他、そのように記した。 次が東条。 先ほどの男と同様だが、堀内嬢曰く、東条は気づくのが早く、非常に抜きにくい相手だったらしい。 それでも交際が数ヶ月に及んだのは、彼がもっとも極秘の情報に関わっているということが捨て難かったからだと彼女は言った。 しかしそれだけではなく、関わった男たちの中では一番心惹かれた相手だったのだろう。 『不倫から抜け出られるかもしれないって思いました……抜け出たいって』 堀内嬢は悲しそうに笑った。 『でも自業自得で……。私がそう思う頃には、彼は私に疑念を濃くしていました。別れるきっかけを探していたんだと思います』 こうも言った。 『もっときちんとした私だったらって、初めて思いました』 結局、もう情報が引き出せなくなったにも関わらず、東条から別れを切り出されるまで堀内嬢は彼を断ち切ることができなかった。
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