彼女のための選択

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しばらく画面を眺めたあと、僕は視線を手元に移した。 “また連絡します。よいお年を” あのキスと温度差のある文面は、無意識に別れの時限を見たからだと思う。 僕が送ったメールは、わずかに指を動かすだけで“complete”の画面に変わり、あっけなく消えた。 “帰りました” ほんの一瞬のためらいのあと、僕は指を動かした。 “complete”── 筋書き通りに粛々と、完璧なバトンタッチをするために。 彼女に惹かれる心を消すように。
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