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「あなたと東条主任がどうなったか、気になっていました」
「……」
「なぜ別れたのか、聞いてもいいですか?」
この男はいけると思ったのだろう。僕を見つめる彼女の目つきが艶やかさを増した。
「私が揺らいでしまって……」
「何に揺らいだんですか?」
「それは……」
彼女は僕をじっと見つめてから、ためらうようにうつ向いた。
「言えません。皆川さんには」
茶番をけしかけたのは僕なので責められないが、かなりの役者ぶりに白けてしまい、僕の方が耐えられなくなってきた。
「きっと、彼はそれに気づいたから……」
「何に?そうやって、次の男を漁っていることですか?」
「えっ……?」
急に冷ややかになった僕の声に、彼女が戸惑いの表情を見せた。
「それとも、これですか?」
僕が机ごしに一枚の紙を寄越すと、彼女は怪訝そうに受け取った。
それが例の新聞記事のコピーだと気づいた彼女の顔色がみるみる変わるのを、僕は注意深く眺めていた。
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