これが君との最後なら

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会う約束をしたその日は金曜日で、僕は彼女の社に出向いていた。 仕事始めからまだ三日とあって、社内は正月気分が漂っている。 新年会にでも繰り出すのだろう。 定時になると、廊下は連れだって騒ぎながら帰り支度に向かう社員の姿が目立っていた。 人事部も然りで、部署ごとに内輪の小さな新年会をやるらしく、大部屋の社員は早めに引けていく。 「あの……今から採用部の新年会なんですけど、皆川さんもいらっしゃいませんか?」 採用部の女子社員が二人、少し緊張気味に僕を誘いにやってきた。 「ああ……申し訳ありません。今から社に戻らなければならないので」 江藤奈都と約束しているので、“社に戻る”というのは嘘だが、“約束が”などと口にすると傍らでまだ何やかやと仕事している人事課長のネタにされる。
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