これが君との最後なら

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下町の細い路地を抜け幹線道路に出ると、僕は信号待ちの車列で前方をぼんやりと眺めた。 それから腕を伸ばし、さきほどバックミラーで見た彼女の小さなシルエットを脳裏から振り払おうと、音楽の音量を上げた。 どこかのFM局から流れてくる曲はまったく好みではなかったが、そのまま聴き続ける。 仕事は予定通りに進んでいて、ゴールは目の前なのに、いつも案件を片付ける度に得られる達成感はまだ僕の中に見当たらない。 きっとゴールテープを切れば変わるだろう。 平日の今ぐらいの時間帯だと、幹線道路を走るのは走り慣れたドライバーばかりだ。 青信号になると車列はすみやかにほぐれ、それぞれの目的地に向けて加速していく。 切れかけた蛍光灯のアパートがある下町は、背後に遠くなっていった。 すべて予定通りだった。 ただひとつ──まだ後ろを振り向こうとする僕の心を除いては。
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