皆川編第13話 ｢これが君との最後なら｣

これが君との最後なら

今日の昼間、堀内嬢による漏洩に関わった男性社員の第一回目の聴取を行った。

僕は所用を理由に東条の聴取には出席しなかったが、全員、堀内嬢の聴取内容とほぼ合致していたらしい。

よってこの件はこれ以上長引くことなく、あとは各々の上司を伴った二回目の聴取を経て処分が決定されることになる。

人事部内にはやれやれと肩の荷を下ろしたような脱力感が漂い、早く収束させてしまいたいという空気がありありと窺えた。

「今日は意外と早く帰れますね」

「そうですね」

「いやー、早く片付いて本当に助かりましたよ」

「ですが、再発防止策を打っておかなければならないでしょうね」

「あー、だよなぁ……」

課長は参ったなという風にこめかみを揉んだ。

この調子なら今回の事件の細部をつつき回してことさら蒸し返す雰囲気にはならなさそうだ。

漏洩記事一件を“見落とした”ことにした僕には有り難かった。