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それから僕はいつもの帰宅後の習慣通りに郵便物をチェックし、雑用を済ませ、部屋をざっと片付けた。
それらが終わると、やりかけの仕事を取り出した。
そうしてかなりの時間をやり過ごした頃、テーブルに置いた携帯がメールの着信を知らせた。
パソコンのキーを打つ手を止め、静かに息をついて腕を伸ばし、点滅する画面を引き寄せる。
開く前から、僕はそれが彼女からだと知っていた。
“江藤です。今から行ってもいいですか?”
いや、知っていたというより、願い、待っていた。
会場でアルコールを飲まず、着替えもせずにこの二時間を過ごしたのは、そういうことだ。
素直な彼女の性格なら、東条のために僕に抗議するだろう。
互いを突き放す時間がなければ、僕は彼女から離れられないのかもしれない。
“どうぞ”
一言返し、パソコンを閉じて、僕は宙を眺めた。
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