第十章

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彼女の到着は早く、メールが届いてからわずか数分でインターホンが鳴った。 ドアを開けると、うつ向き加減に立っていた彼女が顔を上げた。 僕の部屋に来る時、彼女はいつもこんな風に緊張した顔でドアの前に立っていた。 今日はそれに加え、思い詰めた表情を目に浮かべている。 赤らんだ頬は寒さのせいなのか、それとも僕から解き放たれて飲んだ久々の酒のせいなのか。 懇親会終了から今まで、彼女はどんな酒を味わったのだろう。 「どうぞ」 彼女を中へと招き入れる。 「メールから早かったですね」 「もう駅に着いていたので。急にすみません」 「いいえ」
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