第十章

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東条の二度目の聴取はセミナー当日の午後一に決まった。 夕方のセミナーと懇親会には東条も出席する。 彼女とともに懇親会で顔を合わせるというのに、なかなかタイミングが悪い。 ただ、遅かれ早かれ僕の目的はあの二人に伝わるのだから、ここに来て延命を願うのも偽善だ。 そう考えつつ、普段より少し重い足を聴取の部屋に向けた。 聴取を行う側は三人。 人事部長、人事課長に僕だ。 課長は筆記も兼ねるので、主だって質問するのは人事部長だ。 東条側は、本人と、彼が所属する企画推進室長。 前回の聴取で情報を抜かれたかどうかの状況確認は済ませたので、今日は主に普段の情報管理方法について確認する。 当人だけでなく部門全体の取り組み、そして彼の部下──すなわち江藤奈都とその他二名──への指導内容についても問題はないか、聞き取ることになる。
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