第十章

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「以前に皆川さんが仰ったように、企画の仕事は結果の出ない堂々巡りの連続です」 しばらく黙っていた彼女が、静かに口を開いた。 一言一言噛み締めるような声にも表情にも、真剣な思いが溢れていた。 「私たちはずっとそこで頑張ってきました。三年間、励まし見守ってくれた上司を尊敬しています。恋愛感情の話ではありません」 上司を尊敬しているという言葉と同時に、彼女の目から涙がこぼれた。 恋愛を越えた敬愛と、仕事に対するひたむきな使命感。 純粋で、綺麗な涙だった。 あまりに純粋で真っ直ぐで、それが僕には苦しくて、何も言えなかった。 「私に限らず、どの職場でも自分たちの仕事と仲間に誇りを持って努力しています。裁く側もそのことを理解して欲しいと思います。これまで過ごしてきて、私は皆川さんを信頼していますから」 強くなったなと思う。 こんなに自分の主張をまっすぐにぶつけられる人だったろうか。
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