第十章

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聴取は予定の一時間ジャストで終わった。 「処分については人事部で協議し、近日中にお知らせします」 「ひとつ、いいですか」 最後に人事部長が締め括ると、企画部長が手を挙げて止めた。 「パネル工場建設地のリークの件ですが、今後ああいう場合、所属長には事前に知らせてもらえませんか?誤情報ならそうと把握しておかないと、うちは企画の中枢ですから間違いが起きることもあるでしょうし」 丁寧な口調だが、苛立ちがこもっているのがわかる。 全社の企画開発に責任を持つトップ部門として、情報を軽んじるあのような手段は受け入れ難いものだと思う。 「……ええーっと、その件は我々ではなく皆川主幹……ですね?」 人事部長に視線で返答を促された課長が、澄ました顔で僕に話を投げた。 確かに僕が主導したが、部長といい課長といい、タヌキぶりに呆れてしまった。
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