第十章

9/26
前へ
/26ページ
次へ
「その件につきましては大変申し訳ありませんでした」 「ああ、いや、それは……」 僕が立ち上がって頭を下げると、企画部長は慌てて手を振った。 「社内同士で欺くというのは、大企業として品位に欠ける手段です。社内外にも混乱を招きますし」 僕はタッチしていないが、他企業で似たケースがあり、工場誘致に期待する地方自治体に肩透かしを食らわせる結果を招いた。 あまり誉められた手段ではないのは事実だ。 「言い訳になりますが、人事は警察ではないので、犯人を突き止める手段がありません。事を公にすると犯人は隠蔽してしまいますし。隠密に解決するためにああいう手段になりましたが、今後はより良い方法を取らせて頂くはずです」 嫌味を言いながらチラリと課長を見ると、決まり悪そうに視線を逸らされた。 まあ、次は彼に“より良い方法で”どうにかしてもらおう。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1795人が本棚に入れています
本棚に追加