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言葉もなく一気に進みたがる身体を押しとどめ、彼女の唇にようやく一言を絞り出した。
「後悔するのでは?」
彼女が後悔することが怖いのと同時に、それ以上に僕自身が怖かった。
今まで経験したことのない破滅の前に立っている気がした。
二人の唇の間に沈黙が落ちる。
彼女の顔は僕より高い位置にある。
先ほどまで青ざめていた頬には赤みがさし、その髪はカーテンのように二人の顔を閉じ込めていた。
その中で、息を詰めて彼女を待つ。
拒否して欲しいのか、進めて欲しいのか、もうわからない。
いまや完全に彼女は僕を支配していた。
僕をじっと見つめてから、やがて彼女は黙って首を横に振った。
駄目だという思いと怖いぐらいの欲求とがせめぎ合い、一瞬、僕は動けなかった。
「しません」
追い討ちをかけた彼女の声で、堰が切れたように僕は理性をかなぐり捨てた。
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