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彼女の身体を返し、膝裏を掬い上げる。
誰に対しても、今までに一度も考えもしなかった行動だった。
今の僕はそれだけ衝動に支配されているということで、そんな自分に頭の片隅の理性が警告を発しているのに、止められない。
彼女の腕が首に巻き付いて、さらに僕を猛らせる。
「後悔しても、もう僕は止めませんよ」
立ち上がると同時に呟いた。
誰に対して言っているのかもわからなかった。
寝室の暗闇で彼女をベッドに下ろし、腰に引っ掛かっていたワンピースを取り去る。
明かりは点けない。
彼女の顔を見ながら抱く勇気がなかった。
欲しいという思いが強ければ強いほど、手放す喪失感は大きい。
目で、耳で、身体すべてで彼女を愛してしまうと、そのあと自分を保つことが危うい気がした。
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