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「……なぜ彼女のことを?」
「最初の夜、夜中に皆川さんの携帯が鳴ったのを切ってしまいました。皆川さんが起きてしまうと思って……ごめんなさい。その時の発信者が香子さんで、お名前を見てしまいました」
最初に彼女が口にした理由は、妥当なものだった。
彼女が香子の名前をしっかり記憶していたことは予想外だったが、彼女が電話を切った一部始終は知っている。
しかし、続けて彼女が明かした事実は、嫌な予感が現実となったものだった。
「あと今日、懇親会でお話しました。私が一人の時に声をかけてこられて、皆川さんとのことをお話されました」
香子への静かな怒りがふつふつとわき上がる。
なぜわざわざ彼女と接触した?
なぜ僕の私的な部分に侵入する?
しかもあの時、香子は彼女と接触したことを僕に隠していた。
香子は策士だ。何か行動する時には必ず目的がある。
あのレストランでの香子の食いつきぶりで、なぜ僕は気づかなかったのか。
離婚で気が弱っているからと油断していた自分にも腹が立った。
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