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「部屋を出ていますから、服を着て下さい。送っていきます」
何も返事をしない彼女に、やはり背中を向けたままそう言ってドアを閉めようとすると、ようやく彼女が声を発した。
「今日は自分で帰ります。まだ時間が早いので大丈夫です」
妙に低くて、感情を押し殺したような声だった。
もっといい終わり方はできなかったのだろうか。
彼女が傷ついていることを感じ、彼女を送っていくわずかな時間に望みをかける。
しかし、そんな僕を突き放すように、彼女は言った。
「最後だから自分で帰ります。一人立ちしないといけないから」
“一人立ちしないといけないから”
僕は何も言えなかった。
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