最後のレッスン

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すべての説明が終わると、質疑応答の後、面談は終了となった。 人事部長、企画推進室長が言葉を交わしながら連れ立って廊下に出ていき、続いて他の社員たちも退室すると、部屋は僕と彼女と東条だけになった。 彼女が足を止め、それを東条が待つ形だ。 気遣い合う二人を前に、色んな意味で仕事納めの時を迎えたのを感じ、僕は笑顔で向き直った。 「昨年末で僕はセミナーの担当から離れることになりました」 彼女は固い表情のままで、何も反応しなかった。 元々セミナーの仕事は助っ人で、新担当が決まったので僕は本業に専念できることになった。 彼女との接点がなくなるのは、僕のためにもいいことだと思う。 僕のかわいい生徒は、これからも転びながら“キャリアウーマン”と呼ぶには一味違う成長の道を逞しく歩んでいくことだろう。 今この場で彼女を見守っているように、東条にはこれからもそうであって欲しいと願いつつ、僕は別れの言葉を告げた。
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