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「僕では自信はつきませんよ」
それを聞いた彼女は怒ったような表情になり、講師としての発言の責任を迫ってきた。
「私の誘惑はてんで駄目だと前に皆川さんが言いました」
今から肌を重ねようとする女というより、駄々っ子のように頬を紅潮させて僕を睨み付けている。
「再テストしろと?」
苦し紛れに繋いだ言葉は迂闊だった。
彼女は黙って頷いた。
“期限まで、僕を練習台にしますか?”
あの時彼女を手放せなかったツケが回ってきたのだ。
二人とも黙ったまま睨み合う。
彼女はわかっていない。
どれだけ僕がそれを欲しがっていて、同時にどれだけ恐れているかを。
僕にとってこれは講義ではないことも、そのあと、僕が壊れて元に戻れなくなることも。
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