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空になったグラスをバーテンダーに滑らせ、無言で二杯目のオーダーを伝える。
たしかこのバーテンダーは、あの日と同じだ。
あの時は気の利かない新米だったが、客が多い金曜日に店番を任されるようになったんだなと考えてから、僕は気づいた。
そういえば、ここに来るのは彼女と遭遇したあの日以来か?
以前は一人になりたくてここに来ていたのに、彼女が部屋に来るようになってから、いつのまにか僕は孤独の癒しを必要としなくなっていた。
新しいグラスを揺らしながら、壁に並んだボトルを眺める。
あの日、頬杖をつき、ポカンと口を開けた間抜けな顔であのボトルを眺めていた彼女を思い出した僕の頬がかすかに緩んだ。
“すっごい美人でぇ……、こっ、こんな顔じゃ、こんな顔じゃ、勝負になりませんっ”
どうしてこんなに苦しいのに、僕は笑っているのだろう?
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