奇跡か、幻か

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しかし、一体何があった? 彼女が亡霊ではないと分かると僕は何とか頭を平常モードに切り替え、彼女がこんな姿になるまでさ迷う要因を考えた。 「あの、お、お一人……」 「いったい、また何をやってるんですか」 東条はたしかに“男として彼女を見守る”と言っていたのに。 ゴールは目前だったのに、どこをどうしくじったら誕生日の夜にこんな状態になるのか。 それでこそ江藤奈都だと呆れるやら可愛いやらで、怒りたいのやら笑いたいのやら自分でも処理できない。 冷静になれと自分に言い聞かせる。 「また失恋したんですか?」 「まだ失恋してません。今からです」 彼女はムッとした表情で答えた。 乾いた涙でガサガサになった頬に、また新たな涙が筋を作り始める。 まだ東条に気持ちを告げる勇気がないのだろうか。 ではなぜ、泣いているのだろう? しかも最初の逆ナンと同じ“お一人ですか”とは──まさか東条め、土壇場でまた美人にひっかかったのか?
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