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さっぱり訳がわからなかったが、ただ一つはっきりしているのは、彼女がまた僕を頼ろうとしてくれたこと。
それを嬉しいと思ってしまう情けない自分を抑えられない。
「練習ならもう終わったはずですよ」
「練習じゃありません!」
彼女はそう吠えると、バッグからゴソゴソとハンカチを取り出して顔を雑に拭いた。
ここまで何度も拭いたのだろう、頬と鼻の頭がこすれて赤くなっている。
その何の媚も計算もない仕草が、どれだけ僕は恋しかったか。
この1ヶ月、消そうとしてもちっとも目減りせず、今さらに膨れあがって僕を潰そうとしている恋情に抵抗した。
「では何の用件ですか?」
さっさと成果をあげて卒業してくれないと、もう踏み台は壊れてしまう。
「好きです」
さきほど振り向いて彼女を見た瞬間と同じ、驚きのあまり僕の頭が思考を飛ばした。
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