1916人が本棚に入れています
本棚に追加
今のは空耳だろうか?
今まで、東条と僕は真逆だからそのはずがないだとか、僕はこんな嫌味男だからそうならない方が彼女のためだとか、いつも理屈をつけては期待を打ち消してきた。
本当は彼女の心が欲しくて欲しくてたまらないのに、恋することから逃げ回っていた。
もう空耳でもいいじゃないか。
一度ぐらい道化になってみろ。
ところが僕が答えるより早く、彼女が涙をこぼしながらたたみかけた。
「酔っていません。流されてもいません。練習じゃありません」
これまで僕が口にしてきた逃げ道を、彼女は先回りして一気にまとめて否定した。
最初のコメントを投稿しよう!