奇跡か、幻か

27/28
前へ
/28ページ
次へ
今までの色々な場面が思い出される。 僕はなんて情けない腰抜けの大馬鹿者だったのだろう。 そして彼女はなんて勇敢で、強くて弱くて可愛いのだろう。 なのに、自分に呆れ果てるのと、彼女愛しさとで胸が詰まりすぎるのとで、身体がすぐに動いてくれない。 「好きです。皆川さんが、好き」 滝のように泣きながら全力で訴えた彼女の台詞で、ようやく僕の身体がフリーズから解けた。 椅子を蹴飛ばす勢いで立ち上がり、力一杯、彼女を抱き締める。 レッスンではなく僕自身として彼女を抱き締められる嬉しさが、僕の心をじわじわと満たしていった。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1916人が本棚に入れています
本棚に追加