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そんな僕が意外だったのか、彼女は押し黙ってしまった。
でも、ここまで来れば腹を括っていた。
彼女の襟元を開き、首筋に顔を埋めた。
触れたい気持ちと、照れ臭さと。
思いの強さと照れ臭さは比例しているのだと思う。
「僕は今まで、誰かに好きだと言ったことがありません」
自慢にならない言い訳のあと、僕は人生で初めての言葉を彼女に贈った。
「好きですよ」
そのたった一言は僕の口から放たれたあと、ふわりと返ってきて僕自身にも染み込んできた。
ああこんなにシンプルで、こんなに究極の感情だったのかと思う。
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