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明かりも点けず、ベッドまで到達することもできず、部屋の玄関に立ったまま、激しく求めた。
電灯のスイッチを兼ねたカードキーは、ホルダーに差し込まれることなく傍らの絨毯に落ちている。
二人の唇と舌が立てる音と吐息が、暗がりの中で壁を伝い倒れていく。
このまま玄関で及ぶのはまずい。
せめてベッドまで行かねばと思うのに、彼女の吐息を数秒でも手放すのが惜しかった。
ところが、そんな僕にストップがかけられた。
乱れた襟元に滑りこんだ僕の手を、彼女の手がしかと握って止めた。
「あのっ、これは練習じゃありません」
暗がりでも彼女の目が真剣に訴えているのがわかる。
行為への流れをぶち切るこのタイミングといい、いきなり生徒に戻った台詞といい、お預けをくらいながらも彼女らしくて僕は微笑んだ。
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