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「好きです」
彼女の耳に、心にも届けと、もう一度ささやいた。
「他の男に委ねたことを後悔しました」
一度正直になると、そのあとは自分でも驚くほど素直になれた。
暗がりの力を借りたからだろう。
きっと明るい場所なら死にたくなるレベルで僕は甘ったるい顔をしているかもしれない。
「……う」
僕の腕の中で、彼女らしい、ヒキガエルのような嗚咽が聞こえた。
そんな彼女をめちゃくちゃに抱き締めたくなる。
「奈都」
暗がりにまぎれ、涙で濡れた唇にキスをしながら、世界で一番特別な名前を呼んだ。
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