ずっと、僕の傍にいて

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*** 三月下旬、今年度最後のセミナーが開催された。 今月の講師までは僕の人選だが、来月からの新年度セミナーは本格的に森田のカラーになる。 人選のためのコネクト先を森田に紹介したのと彼がピックアップした布陣をチェックしただけで、僕はノータッチだ。 「課長、今日はどうされます?席、作っておきましょうか?」 「いや、今日は遠慮しておくよ」 あまり僕が出入りすると、森田が人脈を広げる機会を減らしてしまう。 まあ、理由はそれだけではないけれど。 「今日は早めに退社させてもらうから、この案件を片付けないと」 「仁科さんと会うんですか?今日、来るし」 森田の勘繰りを無視しつつ、いつか奈都のことを知ったら森田はどんな反応をするかなと考えた。 顧客と付き合うことは別に社則で禁じられている訳ではない。 ただ見た目が平凡な彼女だし歳も少し下なので、森田の余計な好奇心を誘い、僕がむっつりオジサン認定されるのだろう。 進んで認めたくはないが、否定もしない。
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