ずっと、僕の傍にいて

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「新年度セミナーは仁科さんじゃない人が出席者になってましたよ。知ってました?」 「ああ……そうだろうな。人事異動があるそうだから」 そのことは別ルートから聞いた。 香子を拒絶した二月のあの夜を最後に、香子とは一切連絡をとっていない。 香子はこれまでの実績を買われ、苦戦中の男性向けラインの建て直しを図るプロジェクトチームの責任者に抜擢されたらしい。 男性向けラインの責任者とは困難な仕事だろうが、彼女なら立派にやり遂げるだろう。 もう関わることはないけれど、彼女の健闘を祈る。 「え、異動ってどこに?」 「詳しくは知らないよ。噂で聞いただけだから。気になるなら自分で聞けばいい」 「え、でも課長、今日仁科さんと会うんじゃないんですか?」 「いいや」 森田は香子に興味があるのだろうか? 僕が素っ気なく否定すると、心なしか森田が嬉しそうな表情を浮かべたように見えた。
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