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今日はセミナーなので、奈都は直帰だ。
そういう時は、僕も可能な範囲でなるべく早く帰る。
ただし、早すぎるのも歓迎されない。
台所が失敗の真っ最中だったりするのだ。
セミナー終了から二時間足らずで仕事の目処がつき、席に戻っていた森田に疑いの目を向けられながら早めに退社する。
森田は香子を誘いたかったようだが、香子は誰かを追うように、森田との立ち話を切り上げて足早にエレベーターに乗り込んで帰ってしまったらしい。
「仁科さん、今日が最後なのになぁー……」
「……」
「聞いてますか課長!」
意外と香子には年下男が合うのではと思うが、僕が仲を取り持つ訳にもいかないし、その気があるなら森田が自力でどうにかすればいい。
すっかり暖かくなった夕暮れの街路を歩きながら、ふと考えた。
香子が追っていったのは奈都ではなかろうか、と。
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