ずっと、僕の傍にいて

15/33
前へ
/33ページ
次へ
今日はセミナーなので、奈都は直帰だ。 そういう時は、僕も可能な範囲でなるべく早く帰る。 ただし、早すぎるのも歓迎されない。 台所が失敗の真っ最中だったりするのだ。 セミナー終了から二時間足らずで仕事の目処がつき、席に戻っていた森田に疑いの目を向けられながら早めに退社する。 森田は香子を誘いたかったようだが、香子は誰かを追うように、森田との立ち話を切り上げて足早にエレベーターに乗り込んで帰ってしまったらしい。 「仁科さん、今日が最後なのになぁー……」 「……」 「聞いてますか課長!」 意外と香子には年下男が合うのではと思うが、僕が仲を取り持つ訳にもいかないし、その気があるなら森田が自力でどうにかすればいい。 すっかり暖かくなった夕暮れの街路を歩きながら、ふと考えた。 香子が追っていったのは奈都ではなかろうか、と。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3506人が本棚に入れています
本棚に追加