ずっと、僕の傍にいて

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玄関ドアを開けると、内部は焼き芋屋が集結したような匂いが充満していた。 ……む。 この匂いは……。 「お、おかえりなさい!」 鍋の惨状を案じていると、リビングから奈都が勢いよく走り出てきた。 「あの、かぼちゃ、焦がしました。すみません」 「匂いでわかります」 廊下の壁にもじもじとくっつきながら決まり悪そうに自己申告する奈都に、僕は表情を変えず答える。 別段驚くことではない。 よくあるやり取りだ。 「火傷と火事だけは気をつけて下さい」 「はいっ、大丈夫です!」 ……可食部が残っているといいが。 リビングに入って一層濃くなった香ばしすぎる匂いに、一抹の不安がよぎる。 それにしても、IHの過加熱防止機能をものともしない焦がしっぷりは、ある意味才能だ。 まあ、調理器具系の企画の際に役立つ経験かもしれない、ということにしておこう。
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