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「え?そんな、だって、今晩は……」
大仕事に今すぐかかれという僕の無茶ぶりに、彼女が顔を赤くしながら唇を尖らせた。
二人とも帰宅が早いことは滅多にない。
僕だってお預けは望んでいないが、引っ越しも断行したい。
「時間は十時まで。ただし完璧を目指してください」
やましいせいでやたら偉そうになったが、とにかくさっさと食器を下げ始める。
食器洗浄機があるので、後片付けは僕がやることが多いのだ。
「えー、完璧って言われても」
「知ってます」
文句を言う奈都をパソコンの前に追いやり、キッチンで食器を洗浄機に入れ終えた僕は、鍋を見て停止した。
これは重曹を使うレベルか?
とりあえずタワシを握る。
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