ずっと、僕の傍にいて

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「あのー、無理です」 「何が?」 どうせ“書き出しが難しい”とか、そんなところだろう。 食器洗浄機のボタンを押していなかったことに気づき、軽く聞き返しながら屈みこむ。 スケベモードで見たせいなのか。 長年使って一度もそんなことはなかったのに、洗浄メニュー“じっくりコース”にそっちを連想した自分に呆れる。 そんな僕の背中に奈都の衝撃弾が落ちた。 「今晩中にセミナーの報告書も書かなきゃいけないの、忘れてました」 「……」 そうだった……。 “じっくりコース”と引っ越し、二兎を追った天罰か。 「……ところで重曹はどこに?」 「あっ、重曹ありますよ!たっぷり持って来ましたから」 ややパワーダウン気味になった嫌味は通じなかったらしく、重曹ヘビーユーザーは得意顔で戸棚を開けた。
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