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「歩けなければ、延泊するしかありませんね」
「え、延泊……?」
もう寝かせてやらねばと思うのに、苛めたくて仕方がない。
「することは限られていますが。何度も寸止めするのも限界の極致でしたから、まずはその分を」
「まずは、て」
ピロートークにはおよそ似つかわしくない、彼女らしいツッコミがまた好きだ。
「這ってでも帰ります……」
「僕の部屋にね」
悪いけど諦めてもらわねば、嫌われようが何だろうが僕はもう手放せない。
すると、彼女がモソモソとこちらに身体の向きを変えた。
頬についていたマスカラの残骸が見当たらないのは、僕とのアレコレがちと激しすぎたせいか。
何か抗議してくるのかと思いきや、彼女は僕の胸に鼻をすり寄せ、心地よさそうに呟いた。
「好き……」
ああ……。
心の中でうめいた。
こんな不意打ち、眠る間際に酷じゃないか!
めちゃくちゃに抱き締めたいのを我慢して、トロトロと眠り始めた瞼に優しくキスをした。
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