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佐渡谷医師は、小さな医院と助手を1人持っていた。
医院と言っても看板をあげている訳でなく、見た目はただの民家だ。
腕の方は優秀で、治療費をかなり取るのにもかかわらず患者は次々とやってきた。
違法な臓器移植や安楽死、犯罪者や、不法入国者、病気を隠したい政治家など、金さえ払えば何でも引き受ける。
そんな噂を聞いて、勇太はやってきたのだった。
佐渡谷医師は言った。
「山本さん、あなたのスペアを作ってとは?…クローンの事で?」
勇太は首を振った。
「いいえ、先生。クローンを作ったところで、僕と遺伝子が同じ赤ん坊が産まれてくるんでしょう。違うんです。僕が望んでいるのは、今の僕のコピーです。全く同じ人間を作ってほしいんだ。ほら最近は技術が進歩しているでしょう。人工の皮膚や臓器や血管、人工知能だってあるんだから、人間を丸ごと作れるんじゃないかと思ってね。足りないところは機械で補ってもいい。」
そこまで言うと助手がお茶を運んで来たので、勇太はそれに口をつけた。
佐渡谷医師はちょっと考えてから言った。
「だいぶ金がかかりますよ。それと条件もある。」
「えぇ、もちろん。お金は十分にある。もう一人、僕を作れるのならどんな条件でもやるつもりです。」
「…それでは、あなたを“半分”頂きます。」
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