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床下から発見されたのは俺の大叔父さんだった。
何年も前に亡くなっていたと聞かされていたが、本当は長く行方不明だったらしい。
連絡が取れなくなり、あちこち探したが見つからず、もしやもうこの世にいないのではと、失踪後すぐに暮らしていた家も調べたが、その時は何も出ては来なかったという。
「今になって、どうして見つかったのかは判らんが、家を壊すどさくさで骨まで壊される前に、ワシが見つけてやれてよかった」
簡単な葬儀の後、祖父はぽつりとそう語ったが、俺の中には疑問があった。それは、どうして大叔父さんが埋まっていた辺りにだけ虫がいなかったのかということだ。
あの家の有り様なら、普通なら総ての部屋に虫がいるのが当然だし、むしろ、死体が埋まっていたような場所には虫はもっと湧いていたと思う。でも俺が見た時、確かにあの部屋のあの一画に虫はいなかった。
それを祖父に尋ねたら、祖父は腕組みをして随分考え込んだ後、そういえば弟は昔から、あんな山の中の家で暮らしていたのに、一度も蚊に刺されたことすらなかったとつぶやいた。
どうやら祖父によく判らないようだが、大叔父さんは、虫にいやがられる体質の人だったらしい。
そんな人が、どうしてあんな虫だらけの家に住み、誰に看取られることもなく、失踪まがいの亡くなり方をしたのか。それは俺にはもっと判らないけれど、
一つだけはっきりしていることがある。
虫が寄って来ないなんてめちゃくちゃ羨ましい体質なのに、一応少なかれ同じ遺伝子を引く俺には、その体質はまったく伝わらなかったということだ。
あれだけ厳重に防御したにもかかわらず、体のあちこちについた虫刺されの痒い跡。それを見ながら、俺は大叔父さんを心底羨ましく思った。
虫だらけの家…完
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