虫だらけの家

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虫だらけの家

 大学の夏休み、祖父にバイト代を出すからと頼まれ、二人でわ山の中にある小さな民家の掃除に行った。  大昔は祖父一家が住んでいたが、祖父の代で引っ越した後、祖父の弟…つまり俺の大叔父さんにあたる人が成人後に出戻って、亡くなるまでずっと一人で住んでいたらしい。  あれは手ていてもやまの中だし、迷惑にはならないだろうと放置していたが、土地開発などで建物を撤去することになり、もしかしたら何か思い出深い品があるかもしれないから、壊す前に一度掃除がしたいというのが祖父の意見だった。  どっちみち、夏休みはバイトをする予定だったから、提示されたバイト代の金額はかなり魅力的だったし、手伝えば祖父孝行にもなる。そう思って簡単にうなずいたのだが、現場の作業は想像を遥かに上回る重労働だった。  聞いていた以上に山奥だし、建物はボロボロすぎて危険を覚えるレベルだ。それに何より虫が凄い。  防虫スプレーは持っていたが、それでは到底効かないレベルで、夏だというのに長袖長ズボンはむろん、首や頭のガードも必須だ。  その格好で汗まみれになりながら家の掃除をしていたのだが、ふとおかしなことに気がついた。  家の中の一部屋だけ極端に虫が少なく、しかもその部屋の一部分には、まったく虫が寄りつかないのだ。  不思議に思い、他の部屋でさ儀容をしていた祖父に声をかけたら、みるみる祖父の顔つきが険しくなった。  どの部屋だと言われて案内すると、祖父は無視のほぼ一画に足を向け、いきなりそこの床板を壊し始めた。  あっけに取られている俺に、お前も手伝えと言ってくる。だから同じように床板を壊し、さらに、土を掘り出すと祖父に習って土を掘っていると、スコップに何か硬い物が当たる感触がした。  それを祖父に伝えると、祖父はすくざましゃがみ込み、手で掻き分けるように土を掘った。その合間から出て来た物は…。  廃屋は圏外だから、どこか、電場の通じるところで警察に連絡をしてくれと祖父は言い、それきり口を噤んで土の上に座り込んだ。その背中に声をかけることはできず、俺は祖父に言われた通りに警察へ連絡するため廃屋を離れた。
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