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「ヒロさ、初めて会った時、全然喋んなかったんだよ。オレが色々聞いてもなんも喋らないし、目も合わせてくれないの。それが今じゃああだからね。いつからだったかな」
成海が遠くを見るように、微笑していた。
「怜くん、本当に大丈夫?」
「ふふ、大丈夫。それで、その小さな部屋で手足を縛られたまま、どれくらい居たのかな、数時間? それとも数分? しばらくすると、男達が部屋に入ってきて、オレは引きずられる様にして、連れて行かれた。突き飛ばされて、目の前を見ると、そこには顔が変形する程殴られて、血だらけの父ちゃんと母ちゃんの姿があった」
「怜くん・・・・・・」
「何が起きてるのか、よく分からなかった。ただ、怖くて、足が震えて立っていられなかったのは覚えてる。震えるオレの後ろで、男達がこう言った。『吐け、吐かないとこのガキを殺すぞ』ってね」
成海の顔から表情が消えた。
「怜くん・・・・・・待って、怜くん」
黒川は不安でたまらなくなり、話を止めた。
成海は黒川の声が聞こえなかったかのように、そのまま話し続けた。
「父ちゃんも母ちゃんも何の事か分からずに、必死にオレの命を助けるよう、懇願してた。そして、そのまま嬲るように、男達がナイフで滅多刺しにしたっ、二人の苦しみに歪む顔がまるでテレビでも見てるかの様に、オレの目に映った。オレは、何も出来なくて、必死にやめてって泣き叫んでた。父ちゃんも母ちゃんも、だんだん体がピクリとも動かなくなってきて・・・・・・でも、その時、母ちゃんの口が動いたんだ。オレの方を見て、確かにこう言った。『逃げなさい』って。その後、男達に銃で頭を撃たれて、動かなくなった。そして・・・・・・、オレは何が何だか分からなくなって、体が熱くなって、大声で叫んでた。ただ、怒りに身を任せて。気が付いたら、オレは見るも無残に殺された家族の側に立ってた。周りには・・・・・・男達の死体らしきものが転がってた」
成海は虚ろな目で、湖を見つめた。
「らしきもの・・・・・・?」
「・・・・・・判別もつかない程、バラバラの状態で転がってたんだ」
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