赤いりんご

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口の端を無理やり引っ張るように引き上げて、明るい声で答えます。そしてすぐに逃げるようにその子から離れました。見せてほしいと言われたら困ると思ったからです。 (何で私のだけ半分なんだろう) 誰もいないところまで逃げてきて、自分の手の中にある欠けたりんごを眺めます。りんごは丸いのに、私の手の中にあるソレは転がりそうにありません。頭の中に欠けていない完璧な実を持って幸せそうに笑うみんなの様子が次から次へと思い浮かびます。なんだか胸がギュッとなって顔が歪んでいき、目から水がポタポタと落ちてきました。 (私の実が半分しかないから、だから私はこんなにも惨めなんだ。) それからはなんだか何をしてもダメな気がして、でも、自分の実が欠けていることは誰にも知られたくなくて、自分も完璧な実を持っているフリをしました。みんなと同じように楽しそうに笑い、幸せそうに微笑んで私のりんごはこんなに綺麗と心にも思っていない事をべらべらと語りました。 そして、どれくらいの時が過ぎたでしょうか。ある時、みんなで自分の実の素晴らしさを語っていた時です。とある男がやってきて、半分のパイナップルをみせました。 「何ソレ?どうしたの?」 「半分食べちゃったの?」 「それじゃあ、乾燥して中身もカスカスになるね」     
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