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「ああ、大丈夫、しばらく入院は必要ですけどね。まあ、あいつはいつも働き過ぎだったから、良い休養だよ」
葵さんの質問に彼は相好を崩して応える。その様子から見ても、彼とその友人は特別な関係なのでは無いかと察せられた。
「そのお友達とのお付き合いは長いんですか?」
茜さんがそんな質問をする。
「いや、まだ三年かな。あいつが姫路に出てきてすぐに知り合ったから、でもどうしてですか?」
「なんとなく、聞いてみただけです」
茜さんはそう応えたが、彼女も僕と同じような印象を受けたのかもしれない。
「それよりも、そろそろ山道を抜けますし、白萩さん、ナビをしてもらって良いですか?」
「え? あ、ああ、そうですね。任して」
彼はそう言って慌てて助手席で地図を広げる。
目の前に戊子町へと通じるトンネルが迫る。トンネルは彼岸と此岸の区切り、なぜかそのような事を考えてしまい、二度と元の世界に戻れないのでは無いか、なぜかそんなことを考えてしまい、なんだか不気味な物のように思えて、黄色いライトで照らされたそのトンネルが少し恐ろしく思えてしまった。
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