二章 鳴神邸

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 僕たちが鳴神邸にたどり着いたのは約束の時間より一〇分ほど早い時間だった。とは言え、車を指定された場所に停め、玄関へと回ると、約束時間ぎりぎりになっていた。屋敷は赤レンガで作られた外壁に、古代ギリシャを思わせる円柱形の柱、大きなアーチに圧倒される。 「中之島の中央公会堂みたい」  葵さんがそんな感想を漏らす。 「何かに似てると思ったら、それだ。中京郵便局かと思ったけど」  茜さんも葵さんの隣で頷いている。ただ、僕には中央公会堂も中京郵便局というのもどういう建物なのか、僕には分からなかった。 「確かに、この建物はルネッサンス・リバイバル様式ですね。一九世紀前半にヨーロッパでルネッサンス建築を復興しようという動きがあったんですよ。その特徴が赤レンガに半円形のアーチ、でも、この建物はどちらかというと、クラシック・リバイバル、いや、その合いの子とでも言った方が……」
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